レアンレアン沢踏査報告

カラカラの大地で車をぶっとばす
カラカラの大地で車をぶっとばす

レアンレアン沢(Salo Leangleang)
2011年9月24,25日
マルア川の遡行を終えて、スラウェシ島での2度目の沢登りを、バンティムルン国立公園内、レアンレアン沢でおこなった。

遡行背景
今回のメイン遡行を行うラティモジョン山塊へ向かう途中、私たちはたくさんの山々を車窓から眺めた。それらのうち、マカッサルから最初に現れる山域がマロス県バンティムルン国立公園の山塊だった。立派な山域に見えたのでアンディに尋ねてみると「コルパラのメンバーはマロスで頻繁に活動を行う」「6月にはフランスの洞窟調査隊と一緒に訪れ、石灰岩質の沢沿いに滝があった」と話してくれた。地の利があり、滝の情報が揃っている上、マカッサルからのアプローチが良いため、「マルア川の次はマロス県の沢に」とすんなりと次目標を決定した。

マロス県(Maros)とマカッサル(Makassar)の位置関係。LonlyPlanetより引用、作成。

日本には石灰岩質の沢は少ない。私たちは小渓だが難易度の高い「イワンヤ沢」のようなゴルジュを想像しながら、アンディお勧めの「レアンレアン沢」へと向かった。(なおレアンとは現地語で「穴」の意味。レアンレアンと2回続けることで「たくさんの穴」という意味になる。名前だけとっても興味深い)

遡行準備
まず今回の沢は「水量が少ないうえに上部から地質が変化する」ということだったので、遡行範囲をアンディが滝を見たという箇所を中心に約10㎞に絞った。車でアプローチできる村付近から、川の上流部の集落までだ。メンバーは日本人5人とエノスというコルパラのメンバーの計6人だ。

今回はマルア川の教訓を生かして、食事メニューを自分達だけで決めずに相談し、市場で買った魚とエビを持っていくこととした。そして今回も前回と同様に、レスキュー機関への申請と加えてバンティムルン国立公園の管理事務所に入域手続を行った。管理事務所には、活動当日にアンディと一緒に事務所を伺い、コルパラからの入域願の提出と入域料を支払うことで許可が下りた。ただし前日に別のコルパラのメンバーと管理事務所に行った際は入域許可が下りなかった。当日はきちんとした書類を携えた効果もあっただろうが、事務所にとって「顔馴染みのアンディ」が私たちに随行し保証してくれたことが大きい。相手にとっても外国人がアウトドア活動を行うということに慣れていない分警戒感が強いのだろう。またアンディが随行したおかげで、入域料も安くなった。

遡行日程
24日
6:00 起床し、最終確認を行う。ちなみに全員寝たのは3時頃だったので、寝むそう。

8:00 アンディの車に荷物を載せて出発。

9:00  マロス周辺で朝食と買い出し

10:00  バンティムルン国立公園管理事務所で入域申請、入渓点に向かう。途中の道から見える農地にはたくさんの奇岩が佇立している。車から降りた地点の河原には、水が一滴もない。嫌な予感がした。

11:30  遡行開始。少しではあるが、水の流れがあった。どこまで水が続くか心配。

水の流れはほとんどない
石灰岩の奇岩帯

12:00  やがて石灰岩のゴルジュが始まる。核心部の4m滝を人工登攀(後述)

石灰岩のゴルジュが始まる。水は汚く、泳ぎたくない。

14:00  両岸が切り立ち始める。ただし水線が途絶え始める。おまけに谷状の地形に、普通の巨岩帯ではない、石灰質の奇岩帯が見られるようになり、まっすぐと進めない。

沢を上から巻く。 上部(外)と内部(洞窟状の流芯)の複雑構造となっている。

奇岩を登ったり、降りたりを繰り返しながらも水線を探し、なんとか沢登りの体を保とうとするが、ほとんど洞窟探検状態。そのような奇岩帯が2度3度と続く。

飲めそうな水を発見!そのまま飲めそうな唯一の水場だった。
奇岩内の水流部を行く。もはや沢登りではなく洞窟探検か。
奇岩内に巨大なホールと釜状のプールがあった。出口はこのドアのような箇所と、ホールの上部のみ。
釜状プール。縦に長過ぎて(およそ12mほどか)ホール全景は撮れなかった。雨期にはホール上部から水が流れ、幻想的な滝が出現するのかもしれない。ここは登れず、一度外に出て、上巻きした。
上から高巻き後、水流部(内部)に下降中。

16:30  奇岩帯を抜けたはいいものの、水が無くて幕営に困る。「次に水があった所で」などと言いつつ単調な河原を歩く。時々サルが音を立てている。明るく、見晴らしはいいが、両岸の奥にとても大きな岩山が連なっているのでGPSが入らない。

雨期はものすごいスピードで水が流れてそうだ。

18:00  結局、窪みに溜まった黒っぽい水しか見つからず、それを煮沸してから飲む。

25日
9:00  活動開始

10:00  腐敗した落ち葉が貯まった淵が3箇所出現、流れは全くない。いづれも泳がなければ大高巻きを強いられる。ザックをビート板にして泳ぐ。

枯葉などが堆積した黒い水、なぜか魚影(ウナギ?、コイ?)あり。2度と泳ぎたくない。しかも水からのあがる箇所が難しく、ロープ使用。

11:00  再び沢内に洞窟構造帯が出現。うまい登り口が見つからず、小阪がエイド交じりのクライミングでリード。

小阪君がエイド交じりのクライミングで抜け、後続はユマール。上部から光が差す。

12:00  沢内を歩く。途中、雨期には滝ができるような10m程度の壁をいくつか登る。
14:00  ランペソの集落に到着。家が4件並ぶ。ここから下山開始。村人に聞くと最寄りの車道まで4時間という。

沢内に牛が見えると、ランペソの集落は近い

 

頭の上で荷物を運ぶ女性たち。この状態で3時間も歩いてきたそうだ。

17:20  車道へ下山完了、アンディはすでに車で迎えに来てくれていた。

渓相について
まずこの沢を含む地域は6月~9月が乾期、12月~2月が雨期、それ以外の月は雨期と乾期が混ざり合ったような気候になるという。そのため私たちが遡行した9月は最も水の少ない時期で、流れの無い渓相であったのは当然とも言える。アンディが洞窟調査のために訪れた6月にもすでに一部で流れが見られただけであったようだ。けれど、あちこちで白色の石灰質の壁に、茶色の横線が走っていたことから雨の多い時には荒々しく水が流れるようだ。また、沢の名前の通り、谷状の地形の中で洞窟のような地形が発達しているため、まっすぐ沢沿いを登ることはできない。「真上に高巻き」なんてことも多々あった。

核心のエイドクライミング

登れるように見えない…

遡行する上で、核心部となったところは、入渓直後の4m滝だ。大きな釜に、ハングした側壁、水は少ないがツルツルの流芯。フリークライミングでは登ることができない。まずハンマー投げを試してみるが、釜があるうえに、落ち口が洞窟のような穴になっているため、高度なコントロールが必要となり失敗。
次に、長い木の棒にフックとロープを仮止めしたものを、壁のひっかかりにかけて、そのロープをお助け紐として釜からユマールする。これは見事成功し、ロープを登ったポイントから、アブミトラバースで落ち口まで抜けた。わずか4mの滝だったが2時間近くの時間を要した。

チョンボ棒+フックでひっかけたロープをユマール

 

装備はギリギリ横から受け渡し可能(ここからチョンボ棒を使用)
トラバースし、トライカムに全体重をかける佐野
途中でオーブに選手交代し(佐野はトライカムがとれ滑落…)落ち口へ
落ち口からの写真

感想
まず日本では考えられない渓相は興味深かった。一方で、常に乾きを覚えたためあまり楽しい気分にはなれず残念だ。水の少ないこの沢には、乾期の始まる6月や、乾期と雨期の複合期間に訪れるとさらに面白くなると思われる。幸いこの沢の後、体調を崩したものは出なかったが、水を濾過する道具や、浄化する薬品も持っていった方がいいだろう。単純な「沢」として捉えるのではなく、石灰岩質の奇岩帯と捉える方がしっくりいく。また蝶の楽園といわれる国立公園内のこの沢では10種類以上の蝶が見られ楽しめた。
マカッサルから近いと言えど、この周辺はまだ探検的余地が残っているのではないだろうか。

記入:大平

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